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キス

10年程毎日欠かさずやっている事がある。

朝起きて洗顔と歯磨きを終えると、ホットコーヒーをカップに注ぎ一息つく。
そこでふとアイツに目を向けると、堪らない様子でおれを見つめてくる。
そんな熱い眼差しにも、もう慣れっこになったおれは優しく手を添え、そっと、かつ素早くおれの口元へ引き寄せる。


目覚めの口付けだ。


寝ぼけているのか、少し深めに入って来た舌先をおれ自身の舌で軽く押し出す。

少し嫌らしく唇ではむ。
軽く舌先を歯であま噛みするのも忘れない。

深く息を吸い、しばし現実を楽しむ。
寝起き独特の香りが鼻腔をくすぐる。

少しずつ頭が覚醒してくる。

いま少しこの状態を楽しみたいが、時間がそれを許さない。
また後で楽しもうと言い聞かせ出かける準備を進める。

鬱陶しい髭を剃り、暑苦しいスーツを身にまとう。
準備が整うと、当然のようにアイツをおれの傍へ引き寄せ、共に家を出る。

こうして一日が始まる。


仕事の合間に隙を見て口付けを交わす。
人目があろうと気にはしていられない。
いくら隙を見ていると言っても仕事中だ。
繰り返せばそれなりのリスクを背負うことになる。

5分程か。
わずかな時間で繰り返される口付け。

誰もおれと目を合わせようとしない。


世界にはおれとアイツの二人だけだ。


一日の仕事で大よそ十数度そんな事をやっていると、その日の仕事も片が付く。
これ無しでは仕事にも手が付かなくなる。


昼食は後輩達と取る事が多いが、食前食後のキスはもう見慣れたらしい。
事の最中にも関わらず後輩達は話しかけてくる。
当然おれも笑顔で受け答える。
くだらないボケには激しくツッコむのも忘れない。


そして眠気を誘う午後。


ゆったりした昼休みを引きずっている為か、やたらとアイツはおれを誘う。
おれはため息を一つつくと、悠然と席を立ち、いつもの場所へと向かう。

そう、仕事場でキスを繰り返しているあの場所へ。


そうやって一日の仕事を終えると、おれは岐路に付く。


稀におれ自身が堪らなくなり、家まで我慢出来ないことがある。
そんな時は最寄の駅を降りると、あえて人が集まっている所へ行ってまた口付けを交わす。
仕事場同様特に目を合わせてくるヤツなど居ない。

少なくともその時、その瞬間だけは世界がおれ一人の物になる。


家に着くと、だれに気兼ねする事無く口付けを繰り返す。

食後、風呂上り、就寝前。

そうやって、大体毎日20回程度はあの唇を、舌先で弄んでしまう。
酒が入ると40回程やってしまった事もある。


体には良くないと理解しているが、習慣にもなっており、そう上手くは行かない。
今月から値上げもされ、毎日320円取られてしまう。
大半が国に税として徴収されるのが我慢ならないが、牛丼1杯程度と割り切り今も付き合っている。


そんなおれとマルボロの話。

Comments:1

かんぬん URL 2006-07-12 (水) 17:54

それなんてエロゲ?

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